Official Live MV
かつて、ひとりの旅人がいた。
まだ世界の広さも知らなかった頃、
彼は小さな鞄と一枚の地図を手に、遥かな土地を目指して旅をしていた。
森を抜け、川を渡り、
見知らぬ街で歌を聴き、
幾つもの出会いと別れを重ねながら、
地図にはない景色を追い求めて歩き続けた。
けれど、その旅はある日、途絶えた。
理由はひとつではなかった。
吹くはずだった風が止まり、
目指していた道を見失い、
いつしか旅人は地図を閉じた。
そして長い年月が流れた。
旅をしていた日々は遠い昔となり、
かつて胸に抱いていた夢も、
古い物語の一節のように記憶の奥へ沈んでいった。
――もう、あの道を歩くことはない。
旅人自身も、そう思っていた。
そんなある夜。
静かな水辺を歩いていた彼の耳に、
どこからともなく懐かしい歌が聞こえてきた。
それは、かつて旅の途中で耳にした旅人たちの歌。
忘れたはずの旋律が、
遠い日の記憶にひとつ、またひとつと光を灯してゆく。
顔を上げると、銀色の月が水面に揺れていた。
その光は細い道となって、
まるで「まだ旅は終わっていない」と告げるように、
遥か彼方まで続いていた。
旅人は、長い間しまい込んでいた地図を開く。
そこに記された世界は、あの日のままだった。
けれど――
地図を持つ自分自身は、もうあの日の少年ではない。
失ったものがある。
別れた人がいる。
叶わなかった願いもある。
そして何より、
あまりにも長い年月が流れてしまった。
今さら歩き出して、何処まで行けるのだろう。
そんな迷いを抱えながら、
旅人は夜明けまで水面の月を見つめていた。
やがて東の空が白み始める。
森から鳥の声が聞こえ、
木々の隙間を朝の光が抜け、
止まっていた世界に少しずつ音が戻ってくる。
そのとき、一陣の風が吹いた。
ずっと待ちわびていた風だった。
旅人は目を閉じ、
懐かしい夜明けの香りを胸いっぱいに吸い込む。
そして――
もう一度だけ、夢の続きを信じてみようと思った。
北へ向かう馬車に乗り、
降り注ぐ星を浴び、
凍てつく夜には消えかけた夢の声に耳を澄ませる。
これから先にもきっと、
数え切れない出会いと別れが待っている。
道に迷う日もあるだろう。
再び立ち止まる夜もあるだろう。
それでもいい。
果てしなき旅路のすべてを、
今度は自分自身の物語として歩いてゆけばいい。
かつて閉じた地図を手に、
旅人は再び世界へと歩き出した。
――「Overture」は、そんな“二度目の旅立ち”を描いた物語。
夢を諦めたことのある人。
諦めざるを得なかった人。
長い時の中で、かつての情熱を置き去りにしてきた人。
時が流れれば、人も、心も、取り巻く世界も変わってゆく。
そしてある日、
消えたと思っていた夢が、もう一度こちらを呼ぶことがある。
長く立ち止まっていたなら、
最初の一歩はきっと怖い。
けれど、始めることに遅すぎるという言葉で、
再び芽吹いた夢まで閉ざす必要はない。
もう一度、旅に出ようとするすべての人へ。
その一歩の先に吹く風を。
その旅路に訪れる新たな出会いを。
そして、これから始まる物語に祝福を。
いつか見た空は、きっと今も澄み渡っている。
これは失われた旅の続きではない。
再び夢を抱いたその瞬間から始まる、
新しい人生の――
Overture ― 序曲。

幻想の吟遊詩人。民族音楽×ヴィジュアル系×J-POPの幅広い音楽性と、高い物語性で聴く者を幻想世界へ誘う。1st Album「幻想紀行詩 -アリアステラ-」。